最近、今の生活の中でふと、あの時の高い空を思い出す時があります。
海外編の続きを、また綴ります。
おじさんの一言で、ようやく「私」を取り戻す
「迷ったら立ち止まるな。まずは伝えろ。」
そう自分に言い聞かせても、心臓のバクバクは一向に収まらない。
でも、あのおじさんが
「小銭をあげるから、そこに電話してみたら?」と言ってくれたのが、
本当に、本当に救いだった。
「そうだ、語学学校には日本語の通じる先生がいるじゃないか!」
パニックになると、人間はこんなに当たり前のことも忘れちゃうらしい。
公衆電話を探して、震える手で番号を押す。
電話の向こうから日本語が聞こえてきた瞬間、
その場に崩れ落ちそうなくらいホッとした。
「住所はわかる??大丈夫!!落ち着いて来てね!」
その言葉だけで、真っ暗だった目の前がパッと明るくなった気がした。
「よし、なんとかなる!絶対に行ける!」
おじさんにお礼を言い、私はついに、ずっと私を守ってくれていた空港の自動ドアへと向かった。
自動ドアの向こう側。「空、広っ!」
プシュー、と音を立ててドアが開いた瞬間。
「あ、空気が違う……」
真っ先に感じたのは、日本とは違う、どこか乾いた、でもどこか甘いような不思議な空気の匂いだった
そして、顔を上げた瞬間に思わず声が出そうになった。
「……空、高っ!っていうか広っ!!」
日本で見ていた空より、なんだかずっと遠くにある気がして、
改めて「私、とんでもない所まで来ちゃったんだな……」と全身で実感した。
あまりの空の広さに、自分がアリんこみたいに小さく感じて、少しだけ怖くなった。
でも、不思議と「おじさんに助けてもらったんだから、私はもう大丈夫」という、
根拠のない自信もどこからか湧いてきた。
次のミッションは、自力で目的地へ!
空港で立ち止まっていた私を救ってくれた、おじさんへの「最初のアクション」。
それを乗り越えたことで、私の中には、
「行動のルール第一条:迷ったら立ち止まらず、自分から助けを求める」
という教訓が刻まれていた。
でも、本当の試練はここからだ。
次のミッションは、自力で学校のある市内まで行くこと。
電話で先生に教えてもらった通り、
一番安くて確実な「電車」を使って、自分の足で目的地を目指すことにした。
自分の体より大きいんじゃないかと思うほどのスーツケースを必死に引っ張って、
駅のホームへ向かう。
ガタン、とドアが閉まって電車が動き出したとき、
ようやく「ふぅ〜〜〜っ」と、今日一番の深いため息が出た。
窓の外には、さっきの広い空がずっと続いている。
ガタゴト揺られながら、過ぎてゆく景色を見ながら、
「よし、第二の壁もクリア。よくやった、私!」と、
心の中で自分をちょっとだけ褒めてあげた。
「これ、テレビの中じゃないよね?」溢れる街のエネルギー
やがて、目的の駅に到着した。
そこは深い地下にあるホーム。
ひんやりした空気の中、重いスーツケースを必死に抱えて、地上へと続く長いエスカレーターを上がっていく。
一歩、また一歩と地上へ近づくにつれて、外の強い光が差し込んできた。
そして、ついに街へと降り立った瞬間、私はその場に石みたいに固まってしまった。
「……え、何これ、テレビの世界?」
パッと目の前に広がったのは、今まで画面の中でしか見たことがないような、
色彩豊かで、なんだか現実味がないほど綺麗な街並みだった。
空を見上げれば、ガラス張りの高層ビルが、あの突き抜けるような青空をキラキラと映し出していた。
「私、本当に今、この場所に立ってるの?」と、
夢を見ているような不思議な感覚。
街に溢れる不思議な熱気が肌に伝わってきて、
なんだか体中の細胞が目覚めるような気がした。
街全体から「生きてる!」というすごいエネルギーが溢れ出している。
多言語が入り混じる騒がしい音、人々の歩くスピード、日本では感じたことのない独特の熱気。
「うわぁ、すごい!本当に来ちゃったんだ……」
あまりの活気に圧倒されそうになったけれど、
それ以上に、「自分の足でここまで来られた」という実感が、私を支えてくれた。
誰かに助けてもらった第一歩の次に、自分の力でこの場所へ辿り着いた瞬間。
そして、私の中に新しいルールがしっかりと刻まれた。
「行動のルール第二条:不安な時ほど、自分の足でリズムを刻む」
さあ、ここからが本当のスタート!
私は気合を入れ直して、大きな荷物を引きずりながら、エネルギッシュな街の中へと進んで行った。

